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【医療関連感染】制御策のための指針

【医療関連感染】制御策のための指針

T.はじめに 

  【医療関連感染】の防止に留意し、あるいは異常発生の際にはその原因の速やかな特定、制圧、終息を図ることは医療の安全対策上、および、患者サービスの質を保つ上に、重要なものと考えられる。そのためには、各医療機関がその規模、内容に応じて対応策を講ずることが肝要と考える。
  本稿は、その基準となる指針を示すことで、本指針が当院に適した形で応用され活用され、当院の実情にあった手順書・マニュアルの策定につながり、現場で適切な【医療関連感染】に対する制御体制が確保・充実されることを目的としている。
  今回、平成27年1月5日に厚生労働省から「院内感染対策のための指針案の送付について(別添)小林ェ伊、大久保憲、森屋恭爾、賀来満夫、他:W 中小病院・診療所を対象としたガイドライン及びマニュアルとアウトブレイク早期特定策の改訂」が発出され、従来の指針の改正が行われたことから、すでに提示した当院の院内感染対策指針(平成22年10月1日版)に関して、院内感染対策中央会議の提言(平成23年2月8日付)および厚生労働省から発出された各種通知などに準拠できるように見直し以下に示す。


U.感染制御策のための指針

  当院が本指針等に則って当院及びその現場でのおのおのの状況に応じた日常の感染制御業務手順(当院全体及び特定部局の手順)を、簡明かつ具体的に指針・手順書・マニュアルとして作成し、その遵守を全職員に周知徹底する。指針の作成に当っては、実践の可能性、科学的合理性、現実的有効性、経済効果などを考慮する。
  1.責任者、指揮系統が明記され、当院全体で活用できる【総合的な感
    染制御手順書】を作成し、必要に応じて部門ごとの特異的対策を盛
    り込んで整備する。少なくとも年に1回は定期的に見直しをおこな
    い、必要に応じて更新していく。
  2.効率よく患者や医療従事者への感染制御策を実施するためには、
    【感染制御手順書】を充実させ、可能な限り科学的根拠に基づいた
    制御策を採用し、経済的にも有効な対策を実施できる手順書とする。
  3.感染制御に関する基本的考え方および方針を明記する。
  4.感染制御のための委員会、その他当院内の感染制御関連組織に関
    する基本的事項について記載する。
  5.当院内の関連組織との相互役割分担および連携などに関する基本
    事項について記載する。
  6.感染制御のために医療従事者に対して行われる研修に関する基本
    方針を記載する。
  7.感染症の発生状況の把握、分析、報告に関する基本方針を記載す
    る。
  8.感染症異常発生時の対応に関する基本方針を記載する。
  9.患者等に対する本指針の閲覧、説明に関する基本方針を記載する。
  10.アウトブレイク(集団発生)あるいは異常発生に対する、迅速な
     特定、制圧対策、終息の判定に関して言及する。
  11.その他当院内における感染制御策の推進のために必要な基本方
     針を記載する。


V.当院内における感染制御のための委員会等の設置と活動基準

  【医療関連感染】の発生を未然に防止することと、ひとたび発生した感染症が拡大しないように可及的速やかに制圧、終息を図ることが大切である。そのためには院長が積極的に感染制御に関わり、「感染制御委員会(院内感染対策委員会と同義)(以下、ICCという。)」、「感染制御チーム(以下、ICTという。)」などが中心となって、総ての職員に対して組織的な対応と教育・啓発活動をしなければならない。
  ICCは院長の諮問委員会であり、検討した諮問事項は院長に答申され、業務運営会議・ICC・ICT、あるいは医療安全管理委員会・SMTでの検討を経て、日常業務化される。
  ICTは院長の直接的管理下にある日常業務実践チームであり、院長より一定の権限を委譲され、同時に義務をも課せられて、組織横断的に活動する必要がある。具体的業務内容は、当院に適した形で手順書(マニュアル)に明記する。
  1.院長
  (1)ICCの答申事項に関し、業務運営会議・ICC・ICT、あるいは医療安全
     管理委員会・SMTでの検討を経て、必要なICT業務を決定し、日常
     業務として指定する。
  (2)ICCでの感染制御業務に関する検討結果を尊重して、可能な限り当
     院の方針として日常業務化する。
  (3)経済効果を考慮しつつ、可能な限りICCの要望に応えて必要経費を
     予算化する。
   2.感染制御委員会(ICC)
  (1)各専門職代表を構成員として組織する。1ヶ月に1回の定期的会議を
      持つ。緊急時は必要に応じて臨時会議を開催する。
  (2)院長の諮問を受けて、感染制御策を検討して答申する。
  (3)ICTの報告を受け、その内容を検討した上で、ICTの活動を支援する
      と共に、必要に応じて、ICTに対して院長名で改善を促す。
  (4)ICTの要請に応じて改善すべき課題を検討し、当院の方針とすべき
      場合はその旨を院長に答申する。
  (5)日常業務化された改善策の実施状況を調査し、必要に応じて見直し
      する。
  (6)個々の日常業務に関する規程(誰がどのようにおこなうか)を定め
      て、院長に答申する。
  (7)実施された対策や介入の効果に対する評価を定期的におこない、
      評価結果を記録、分析し、必要な場合は、さらなる改善策を勧告
     する。
   3.ICT
  (1)「専任の院内感染管理者」として、ICD(23学会によるICD制度協議
      会)、感染管理認定看護師(日本看護協会)、認定感染制御実践看
      護師(東京医療保健大学大学院)、感染制御関連大学院修了者、イ
      ンフェクションコントロールスタッフ養成講習会修了者(日本病院
      会)、あるいは、感染制御専門薬剤師(日本病院薬剤師会)、感染
      制御認定臨床微生物検査技師(日本臨床微生物学会)、その他の
      適格者、のいずれかで、院長が適任と判断した者を中心に組織す
     る。
  (2)院長直属のチームとし、感染制御に関する権限を委譲されると共に
      責任を持つ。また、ICTは、重要事項を定期的に院長に報告する義
      務を有する。
  (3)ICTは当院感染対策の実働部隊であり、日常業務としての感染対策
      を計画立案する。
     業務内容としては、@サーベイランス、A感染防止技術の普及、
     B職業感染防止に関すること、C職員教育に関すること、などが
     柱となる。また、D異常感染症発生時やアウトブレイク時の
      連絡体制や組織的対応のルール策定、さらに、EICTに所属する
      医師及び薬剤師が中心となり、抗菌薬適正使用に関する介入も重
     要な業務である。
  (4)可能な限り週に1回以上の頻度で、ICTのうち少なくとも2名以上の参
      加の上で定期的全病棟(腎透析センターを含む)ラウンドをおこな
      って、@現場の改善に関する介入、A現場の教育・啓発、Bアウト
      ブレイクあるいは異常発生(単発の異常感染症を含む)の特定と制
      圧、Cその他に当たる。
     ★注:患者入退院の動きを考慮して、ラウンドは全病棟、最低週1回
     は必要。
  (5)重要な検討事項、感染症のアウトブレイクあるいは異常発生時及び
     発生が疑われた際は、その状況及び患者への対応等を、院長へ報
     告する。
  (6)異常な感染症が発生した場合は、速やかに発生の原因を究明し、
      改善策を立案し、実施するために全職員への周知徹底を図る。
  (7)ICTは、サーベイランスデータはじめ、さまざまな感染に関する情報
      を収集し、現場の感染制御対策に役立つように工夫し発信する役
      割がある。また、収集したデータをわかりやすくまとめ記録して
     いく役割がある。
  (8)病棟ラウンドに当たっては、臨床検査科からの報告を活用して感染
      症患者の発生状況等を点検するとともに、各種の予防策の実施状
      況やその効<果を定期的に評価し、各病棟(腎透析センター)にお
      ける感染制御担当者の活用等により臨床現場への適切な支援をお
     こなう。
  (9)職員教育(集団教育と個別教育)の企画遂行を積極的におこなう。
   4.その他
   発生した医療関連感染症が、正常範囲の発生か、アウトブレイクある
  いは異常発生かの判断がつきにくいときは、「厚生労働省地域支援ネッ
  トワーク担当事務局」、あるいは「日本環境感染学会事務局」の担当者
  に相談する。


W.医療従事者に対する研修(職員教育)の実施

  医療従事者に対する研修(職員教育)には、@就職時の初期研修、A就職後定期的におこなう継続研修、Bラウンド等による個別指導の3つがある。更に、学会、研究会、講習会など、院外でおこなわれる定期的、あるいは、臨時の院外研修がある。
  1.就職時の初期研修は、ICTあるいはそれにかわる十分な実務経験
   を有する指導者が適切におこなう。
  2.継続的研修は、年2回程度開催する。また、必要に応じて、臨時の
     研修をおこなう。これらは、当院の実情に即した内容で、職種横断
     的に開催する。
   3.院外研修を、適宜院内研修に代えることも可とする。
   4.個別研修(指導)あるいは個別の現場介入を、可能な形でおこなう。
  5.これらの諸研修の開催結果、あるいは、院外研修の参加実績を、記
     録保存する。


X.感染症の発生状況の報告その他に基づいた改善方策等

  1.サーベイランス
   日常的に当院における感染症の発生状況を把握するシステムとして、
  対象限定サーベイランスを必要に応じて実施し、その結果が感染制御
  策に生かされていることが望ましい。
  (1)カテーテル関連血流感染、手術部位感染、人工呼吸器関連肺炎、
     尿路感染、その他の対象限定サーベイランスを可能な範囲で実
     施する。
  (2)サーベイランスにおける診断基準は、米国のNational Healthcare
     Safety Networkシステムに準拠する。
  (3)本邦におけるサーベイランスの手法は、厚生労働省院内感染対策
     サーベイランス (JANIS)システムがある。検査部門、全入院患
     者部門に参加すること。
     デバイスサーベイランスとして、日本環境感染学会がおこなってい
     る(JHAIS)システムとしての医療器具関連サーベイランスへの参
     加も推奨される。
  2.アウトブレイクあるいは異常発生の監視・把握と対応
   アウトブレイクあるいは異常発生は、迅速に特定し、対応する必要が
  ある。また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌
  (MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、Clostridium difficile、
  多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(MDRAb)など、アウトブレイク
  の危険性のある微生物の検出状況には常に監視を怠らない注意が必
  要である。更にまた、アウトブレイクあるいは異常発生が起こった場合
  には、感染経路や原因を速やかに究明して、効果的な再発防止策を採
  用、実行する。
  (1)アウトブレイクを疑う基準としては、@1例目の発見から4週間以内
     に、同一病棟において新規に同一菌種による感染症の発病症例
     (以下の4菌種は保菌者を含む:バンコマイシン耐性黄色ブドウ球
     菌(VRSA)、MDRP、VRE、MDRAb)が計3例以上特定された場合、
     あるいは、A同一機関内で同一菌株と思われる感染症の発病症例
     (抗菌薬感受性パターンが類似した症例等)(上記の4菌種は保
     菌者を含む)が計3例以上特定された場合を基本とする。ただし、
     カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)、VRSA、MDRP、VRE、
     及び多剤耐性アシネトバクター属の5種類の多剤耐性菌について
     は、保菌も含めて1例目の発見をもって、アウトブレイクに準じ
     て厳重な感染対策を実施すること。
  (2)アウトブレイクに対する感染対策を実施した後、新たな感染症の発
     病症例(上記の4菌種は保菌者を含む)を認めた場合、院内感染対
     策に不備がある可能性があると判断し、速やかに通常時から協力
     関係にある地域のネットワークに参加する長崎大学病院・佐世保
     市立総合病院の専門家に感染拡大の防止に向けた支援を依頼す
     る。
  (3)当院内において院内感染対策を講じた後、@当院内で同一菌種に
     よる感染症の発病症例(上記の4菌種は保菌者を含む)が多数に
     のぼる場合(目安として10名以上となった場合)、またはA当院
     内感染事案との因果関係が否定できない死亡者が確認された場合
     は、佐世保市保健所に速やかに報告する。
  (4)前項の状況に至らない時点においても、当院の判断の下、必要に応
     じて佐世保市保健所に連絡・相談すること。
  (5)当院の各領域別の微生物の分離率ならびに感染症の発生動向か
     ら、【医療関連感染】のアウトブレイクあるいは異常発生をいち早
     く特定し、制圧の初動体制を含めて迅速な対応がなされるよう、感
     染に関わる情報管理を適切におこなう。
  (6)臨床検査科では、業務として検体からの検出菌の薬剤耐性パターン
     などの解析を外注業者に指示し、疫学情報を日常的にICTおよび臨
     床側へフィードバックする。
  (7)当院は細菌検査等を外注しているので、外注業者と緊密な連絡を維
     持する。
  (8)必要に応じて地域支援ネットワーク、長崎大学病院・佐世保市立総
     合病院(佐世保市総合医療センター)・近隣の日本環境感染学会認
     定教育施設を活用し、外部よりの協力と支援を要請する。
  3.手指衛生
   手指衛生は、感染制御策の基本である。然し、実践の場での遵守率が
  決して高くないのが最大の課題である。
  (1)手指衛生の重要性を認識して、遵守率が高くなるような教育、介入
     をおこなう。
  (2)手洗い、あるいは、手指消毒のための設備・備品を整備し、患者ケ
      アーの前後には必ず手指衛生を遵守する。
  (3)手指衛生の基本は手指消毒用アルコール製剤による擦式消毒、も
     しくは、石けん・抗菌性石けん(クロルヘキシジン・スクラブ剤、
     ポビドンヨード・スクラブ剤等)と流水による手洗いである。
  (4)目に見える汚れがある場合、石けんあるいは抗菌性石けんと流水
     による手洗いをおこなう。
  4.微生物汚染経路遮断
   最も有効な微生物汚染経路遮断策として、米国疾病予防管理センター
  (CDC)の標準予防策、及び、9.付加的対策で詳述する感染経路別予
   防策を実施する必要がある。 
  (1)血液・体液・分泌物・排泄物・あるいはそれらによる汚染物などの感
     染性物質による接触汚染または飛沫汚染を受ける可能性のある場
     合には、手袋、ガウン、マスクなどの個人防護具が適切に配備さ
     れ、その目的および使用法が正しく認識、遵守されている。
  (2)呼吸器症状のある場合には、咳による飛沫汚染を防止するために、
     患者にサージカルマスクの着用を要請して、汚染の拡散防止を図
     る。
  5.環境清浄化
   患者環境は、常に清潔に維持することが大切である。
  (1)患者環境は質の良い清掃(目に見えるゴミ、汚染、しみがないこと。
     ごみ等に起因する異臭の無いこと。その他。)の維持に配慮する。
     ★注:手指消毒薬ディスペンサーが原因となる床のしみは除去困
     難。
  (2)限られたスペースを有効に活用して、清潔と不潔との区別に心が
     ける。
  (3)流しなどの水場の排水口および湿潤部位などは、必ず汚染している
     ものと考え、水の跳ね返りによる汚染に留意する。
  (4)床に近い棚(床から30cm以内)に、清潔な器材を保管しない。
  (5)薬剤・医療器材の長期保存を避ける工夫をする。
  (6)手の高頻度接触部位は、1日1回以上清拭または必要に応じて
     消毒(第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、小範囲ならア
     ルコール、その他。)する。
  (7)床などの水平面は、時期を決めた定期清掃をおこない、壁やカー
     テンなどの垂直面は、汚染が明らかな場合に清掃または洗濯す
     る。
  (8)蓄尿や尿量測定が不可欠な場合は、汚物室などの湿潤部位の日
     常的な消毒や衛生管理に配慮する。
  (9)清掃業務を委託している「ワタキュー業者」に対して、感染制
     御に関連する重要な基本知識に関する、清掃員の教育・訓練歴
     などを確認する。
  6.防御環境の整備
   従来の基本的な感染経路別予防策に加えて、「防御環境」という概念
  が加わり、易感染患者を病原微生物から保護することにも重点が向けら
  れるようになってきた。
  (1)各種の個人防護具の着用を容易かつ確実におこなう必要があり、
     感染を伝播する可能性の高い伝染性疾患患者は個室収容、また
     は、集団隔離(コホート)収容する。
  (2)感染リスクの高い易感染患者を個室収容する場合、そこで用いる
     体温計、血圧測定装置などの機器類は、他の患者との供用は避
     け、専用のものを配備する。
  (3)集中治療室、手術部などの清潔領域への入室に際して、履物交換
     と個人防護具着用を常時実施する必要性はない。
  7.消毒薬適正使用
   消毒薬は、一定の抗菌スペクトルを有するものであり、適用対象
  と対象微生物とを考慮した適正使用が肝要である。
  (1)生体消毒薬と環境用消毒薬は、区別して使用する。ただし、
     アルコールは、両者に適
用される。
  (2)生体消毒薬は、皮膚損傷、組織損傷などに留意して適用を
     考慮する。
  (3)塩素製剤などを環境に適用する場合は、その副作用に注意
     し、濃度の高いものを広範囲に使用しない。
  (4)高水準消毒薬(グルタラール、過酢酸、フタラール)は、環
     境の消毒には使用しない。
  (5)環境の汚染除去(清浄化)の基本は清掃であり、環境消毒を
     必要とする場合は、清拭消毒法により局所的におこなう。
  8.抗菌薬適正使用
   抗菌薬は不適正に用いると、耐性株を生み出す、あるいは、耐性株を
  選択残存させる危険性がある。対象微生物を考慮した、可能な限り短い
  投与期間が望まれる。
  (1)対象微生物と対象臓器の組織内濃度を考慮した適正量の投与をお
     こなう。
  (2)分離細菌の薬剤感受性検査結果に基づく抗菌薬選択をおこなう。
  (3)細菌培養等の検査結果を得る前でも、必要な場合は、経験的治療
     (empiric therapy)をおこなわなければならない。
  (4)必要に応じた治療薬物モニタリング(血中濃度測定)(TDM)に
     より適正かつ効果的投与をおこなう。
  (5)特別な例を除いて、1つの抗菌薬を長期間連続使用することは厳
     に慎まなければならない(数日程度が限界の目安)。
  (6)院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制を有すること。特
     に、特定抗菌薬(広域スペクトラムを有する抗菌薬、抗メチシ
     リン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬等)については、届出制又
     は許可制の体制をとること。
  (7)VRE、MRSA、MDRPなど特定の多剤耐性菌を保菌していても、無症
     状の症例に対しては抗菌薬の投与による除菌はおこなわない。
  (8)当院における薬剤感受性パターン(抗菌薬感受性率表:アンチ
     バイオグラム)を把握しておく。併せて、佐世保・県北地域に
     おける薬剤感受性サーベイランスの結果を参照する。
  9.付加的対策
   疾患及び病態等に応じて感染経路別予防策(空気予防策、飛沫予防
  策、接触予防策)を追加して実施する必要がある。以下の感染経路を
  考慮した感染制御策を採用する必要がある。
  (1)空気感染(粒径5μm以下の飛沫核。長時間、遠くまで浮遊する。)
   @ 麻疹
   A 水痘(播種性帯状疱疹を含む)
   B 結核
   C 重症急性呼吸器症候群(SARS)、高病原性鳥インフルエンザを含
     む新型インフルエンザ、ノロウイルス感染症等も状況によっては
     空気中を介しての感染(塵埃感染)の可能性あり。
  (2)飛沫感染(粒径5μmより大きい飛沫)
   a. 侵襲性B型インフルエンザ菌疾患(髄膜炎、肺炎、喉頭炎、敗血
     症を含む)
   b. 侵襲性髄膜炎菌疾患(髄膜炎、肺炎、敗血症を含む)
   c. 重症細菌性呼吸器感染症
   @ ジフテリア(喉頭)
   A マイコプラズマ肺炎
   B 百日咳
   C 肺ペスト
   D 溶連菌性咽頭炎、肺炎、猩紅熱(乳幼児における)
   d. ウイルス感染症(下記のウイルスによって惹起される疾患)
   @ アデノウイルス
   A インフルエンザウイルス(季節型)
   B ムンプス(流行性耳下腺炎)ウイルス
   C パルボウイルスB19
   D 風疹ウイルス
   e. 新興感染症
   @ 重症急性呼吸器症候群(SARS)
   A 高病原性鳥インフルエンザ
   f. その他
  (3)接触感染(直接的接触と環境・機器等を介しての間接的接触とが
     ある。)
   a. 感染症法に基づく特定微生物の胃腸管、呼吸器、皮膚、創部の感
     染症あるいは定着状態(以下重複あり)
   b. 条件によっては環境で長期生存する菌
   (MRSA、Clostridium difficile、Acinetobacter baumannii、VRE、MDRP
     など)
   c. 小児におけるrespiratory syncytial(RS)ウイルス、パラインフル
     エンザウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスその他腸管感染症ウ
     イルスなど
   d. 接触感染性の強い、あるいは、乾燥皮膚に起こりうる皮膚感染症
   @ ジフテリア(皮膚)
   A 単純ヘルペスウイルス感染症(新生児あるいは粘膜皮膚感染)
   B 膿痂疹
   C 封じ込められていない(適切に被覆されていない)大きな膿瘍、蜂窩
     織炎、褥瘡
   D 虱寄生症
   E 疥癬
   F 乳幼児におけるブドウ球菌?
   G 帯状疱疹(播種性あるいは免疫不全患者の)
   H 市井感染型(しせいかんせんがた)パントン・バレンタイン・ロイコシ
     ジン陽性      MRSA(PVL positive CA-MRSA)感染症
   e. 流行性角結膜炎
   f. ウイルス性出血熱(エボラ出血熱、ラッサ熱、マールブルグ病、
     クリミア・コンゴ出血熱:これらの疾患は、最近、飛沫感染の可
     能性もあるとされている。)
  10.遵守率向上策
   マニュアルに記載された各制御策は、全職員の協力の下に、遵守率
  を高めなければならない。これが、大きな課題である。
  (1)ICTは、現場職員が「自主的に各制御策を実践するよう」自覚を持っ
     てケアーに当たるよう誘導する。
  (2)ICTは、現場職員を教育啓発し、「自ら進んで実践して行くよう」動機
     付けをする。
  (3)就職時初期教育、定期的教育、必要に応じた臨時教育を通して、
    「全職員の感染制御策に関する知識を高め、 重要性を自覚するよ
     う」導く。
  (4)定期的ICTラウンドを活用して、現場における効果的介入を試みる。
  (5)定期的に@手指衛生やA各種の感染制御策の遵守状況につき、監
     査auditするとともに、擦式消毒薬の使用量を調査してその結果を
     フィードバックする(容器に使用量が分かるよう、線と日付を記
     しておくなど。)。
  11.地域支援
   専門家を擁するしかるべき組織に相談し、支援を求める。
  (1)地域支援ネットワークを充実させ、これを活用する。
  (2)院内で対策をおこなっているにもかかわらず、【医療関連感染】の発
     生が継続する場合、もしくは院内のみでは対応が困難な場合には、
     地域支援ネットワークに速やかに相談する。
  12.予防接種
   予防接種が可能な感染性疾患に対しては、接種率を高めることが最大
  の制御策である。
  (1)ワクチン接種によって感染が予防できる疾患(B型肝炎、麻疹、風
     疹、水痘、流行性耳下腺炎、インフルエンザ等)については、適切
     にワクチン接種をおこなう。
  (2)患者・医療従事者共に接種率を高める工夫をする。
  13.職業感染防止
   医療従事者の【医療関連感染】制御も重要な課題であり、十分な配慮
  が必要である。
  (1)針刺し防止のためリキャップを原則的に禁止する。
  (2)リキャップが必要な際は、安全な方法を採用する。
  (3)試験管などの採血用容器、その他を、手に持ったまま、血液などの
     入った針付き注射器を操作しない。
  (4)廃棄専用容器を対象別に分けて配置する。
  (5)使用済み注射器(針付きのまま)、その他、鋭利な器具専用の安全
     廃棄容器を用意する。
  (6)安全装置付き器材の導入を考慮する。
  (7)ワクチン接種によって職業感染予防が可能な疾患に対しては、医療
     従事者が当該ワクチンを接種する体制を確立する。
  (8)感染経路別予防策に即した個人防護具(PPE)を着用する。
  (9)結核などの空気予防策が必要な患者に接する場合は、N95(日本製
     はDS2)以上の微粒子用マスクを着用する。
  14.第三者評価
   【医療関連感染】制御策の質の評価は、第三者評価(外部評価)される
  ことが望ましい。
  (1)【医療関連感染】制御策の当院の質の評価は、第三者グループに依
     頼し、あるいは第三者グループを独自に組織し、審査結果を改善に
     つなげる。
  (2)半年に1回程度の第三者評価を受けることが望ましい。
  15.患者・家族への情報提供と説明
   患者本人及び患者家族に対して、適切なインフォームドコンセントをお
  こなう。
  (1)疾病の説明とともに、感染防止の基本についても説明して、理解を
     得た上で、 協力を求める。
  (2)必要に応じて感染率などの情報を公開する。
  16.患者・家族等に対する本指針の閲覧
   本指針に関して、当院ホームページに内容を開示する。

2016年(平成28年)4月1日
感染制御委員会(院内感染対策委員会)(ICC)、ICT
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